乳がんの正しい知識を、若い世代にも~ピンクリボンフェスティバル「オープンセミナー」を池袋で開催~「乳がんのこと、私も伝えたい」と参加者が感想 | ピンクリボンフェスティバル公式サイト

Pink Ribbon Festivalピンクリボンフェスティバル

乳がんの正しい知識を、若い世代にも
~ピンクリボンフェスティバル「オープンセミナー」を池袋で開催~「乳がんのこと、私も伝えたい」と参加者が感想

 若い女性に乳がんの正しい知識を分かりやすく伝えるため、日本対がん協会などは2020年11月14日、東京・池袋で「ピンクリボンオープンセミナー」(協賛:中外製薬株式会社、協力:丸富製紙株式会社)を開きました。講師は昭和大学医学部乳腺外科講師の増田紘子先生で、タレントの関根麻里さんも登場しました。当日は、新型コロナウイルス感染者が増加に転じる前だったため、20~30代の女性約80人が参加し、通りかかった多くの買い物客も足を止めて、セミナーの様子を見ていました。

 2020年のピンクリボンフェスティバルは、新型コロナ禍で東京と神戸のスマイルウオークを中止したほか、シンポジウム(https://www.pinkribbonfestival.jp/symposium/        )や乳房再建セミナー(https://www.pinkribbonfestival.jp/seminar_breast/     )をWeb開催などに切り替えざるをえませんでした。その中で開いた唯一のリアルイベントです。司会はフリーアナウンサーの貞包(さだかね)みゆきさんが務め、ピンクリボンフェスティバルのオフィシャルメッセンジャー「モモ妹」も姿を見せました。

【若い女性もかかりやすい乳がん】

 増田先生はまず、乳がんの罹患者数や死亡者数を紹介しました。国内の女性で最も罹患者数の多いがんは乳がんです。今や生涯で国内女性の9人に1人が乳がんにかかっています。一方で、乳がんによる死亡者は、大腸がんや肺がんによる死亡者より少なく、女性の中では第5位にとどまっています。増田先生は「乳がんの罹患者は多いですが、早期に見つけて治療すれば、多くの人は治ります」と指摘しました。

 この日の参加者は20~30代女性だったので、先生は次に、若い女性の場合、どんながんにかかりやすいかを解説しました。20歳未満だと白血病が最多ですが、20代になると子宮頸がんが増え始め、30代は乳がんがトップになります。このうち子宮頸がんは20代から罹患者数が急激に増え、40代が罹患者数のピークとなります。乳がんは30代から急激に増え、40代と60代が罹患者数のピークとなります。こうした現状をグラフで示しながら、「子宮頸がんと乳がんの影響で、60歳までは男性より女性の方ががんにかかりやすいから注意してください」と呼びかけました。一方で、「乳がんの罹患者が増え続けているといっても、増加の度合いは落ち着いてきています」と強調しました。

【乳がん検診受診率は40%台】

 説明を聞いていた貞包さんが「私、40代なんです。『やばい、やばい』と、ずっと思っています。だから検診って大事ですよね」と話すと、増田先生は乳がん検診に話題を進めました。

 国が推奨する乳がん検診はマンモグラフィ検診です。国の指針で40歳以上の女性が2年に1回受診することと決められています。しかし、マンモグラフィの検診受診率が全国平均で40%台にとどまっています。先生は「仕事で忙しくて受けられない、などの理由があるのかもしれませんが、もう少し意識を持って受診してほしいです」と訴えました。

増田紘子先生

【若い女性とマンモグラフィ】

 続いて増田先生は、マンモグラフィで撮影した乳房の画像を映し出し、白っぽい塊になっている所が、がんであることを示しました。しかし、日本人の場合は乳腺がしっかりしていて脂肪が少ない人(高濃度乳房)が多く、こういう人の乳房をマンモグラフィで映すと、全体的に白っぽい画像になるため、小さながんが見つけにくくなります。特に若い女性に多いため、「40代以上の場合、マンモグラフィは有用ですが、若い人の場合は考えなくてはいけません」。また、国の乳がん検診の指針には入っていないものの乳がん発見に役立っている乳房超音波検査を取り上げ、「乳腺組織がしっかりしている若い女性でも、乳房超音波検査で小さながんを見つけることもできます」と話しました。

【大切な乳房セルフチェック】

 貞包さんが「検診の習慣づけは大事ですが、(乳がん対策として)日々できることがあれば、いいなと思うんですが」と問いかけると、先生は「大腸がんや胃がんは自分で見つけることは困難ですが、乳がんは体の表面にできるので、日々のチェックが可能なんです」といって、乳房のセルフチェックについて説明しました。

 チェックするタイミングとしては、生理が終わって1週間後の乳腺組織が落ち着いている時期が良く、「手のひら全体で乳房を触ってください。がんがあると、何か引っかかるような感じがあります。左右の乳房、乳頭の違いや、正常な時の形を覚えておいて、毎月変化がないかなどを見てください」と、会場の女性に呼びかけました。

貞包みゆきさん

【禁煙は最大のがん予防】

 増田先生は、がんの予防についてもアドバイスしました。日本人のがんの原因で、一番多いのは喫煙だと指摘したうえで、「乳がんに関わらず、タバコはがんの原因になるので、ぜひやめてほしい」と訴えました。さらに、子宮頸がんや肝臓がんの原因である感染症への予防、ストレスや運動不足の解消、節酒、バランスのいい食事の摂取が大事であると指摘しました。

【参加者からの質問】

 解説が一段落した後、参加者から質問がありました。1つ目は「チーズなどの乳製品が乳がんに良くないと聞いたが本当か」という質問です。

増田先生は「食事とがんの関係は、しっかりしたデータがなく非常に難しい」と述べたうえで、「乳製品が明らかにがんに悪いというデータはありませんし、私たち乳腺科医は『乳製品を食べるな』という指導はしません」。これを聞いた関根さんは「私も乳製品、大好きです。適度にとっていきたいです」と笑顔で話しました。

関根麻里さん

 次に「ピルと乳がんの関係について教えてほしい」という質問がありました。増田先生は「ピルには女性ホルモンが含まれているものが多いが、今は乳がんのリスクを上げないようなピルもある。ピルを服用している人は、まずは婦人科の先生に相談してほしい」と答えました。

 イベントはこの後、関根さんと貞包さんの対談に移り、関根さんは普段、食事で気を付けていることや自らのリラックス方法などを参加者に公表。乳房のセルフチェックをはじめ、自分の体調に毎日気を付けることが大事だと話していました。

【「非常に役に立った」と参加者が感想】

 イベント終了後、参加した女性にアンケートをしました。増田先生のお話については、86%の参加者が「とても参考になった」と答え、残りの14%の方も「まあ参考になった」と答えました。自由記述欄では「非常に役立ちました」「関根さんの生笑顔にもパワーをいただけて、一石二鳥でした」「乳がんについて考える良いきっかけになりました。私も伝えていきたいです」などの回答が目立ちました。オープンセミナーを通じて、若い女性が一層、乳がんに関心をもち、今後、乳房セルフチェックに努めて頂けると幸いです。

【Webでのシンポジウム・セミナー公開中】

 この日のオープンセミナー以外に、日本対がん協会はWeb上でシンポジウムや乳房再建セミナーを公開しています。講師と演題、URLは以下の通りです。ぜひ、ご覧ください。


≪ピンクリボンシンポジウム≫(https://www.pinkribbonfestival.jp/symposium/

・中村 清吾先生(昭和大学医学部乳腺外科教授・日本乳癌学会監事)

 「乳がんの診断と治療 ―最近の話題より―」

・下村 昭彦先生(国立国際医療研究センター乳腺・腫瘍内科/臨床ゲノム科)

 「コロナウイルス感染症流行下の乳がん診療〜必要な医療を必要な人に〜」

・鈴木 美慧さん(聖路加国際病院 遺伝診療部認定遺伝カウンセラー、同研究センター臨床助教)

 「一緒に考えよう!もし乳がんのなりやすさがわかったら」

・だいたひかるさん(お笑い芸人)、原元 美紀さん(フリーアナウンサー)

 ゲストトーク「乳がんになっても大丈夫。」


≪乳房再建セミナー≫(https://www.pinkribbonfestival.jp/seminar_breast/

・小川 朋子先生(三重大学医学部附属病院 乳腺センター・乳腺外科教授)

 「乳がん患者さんのQOLを考えた乳癌手術」

・棚倉 健太先生(三井記念病院形成外科・再建外科科長、同乳腺センター副センター長)

 「日本における乳房再建のいま」

・中村 清吾先生(昭和大学医学部乳腺外科教授・日本乳癌学会監事)、小川先生、棚倉先生

 ファシリテーター小西 宏(公益財団法人日本対がん協会がん検診研究グループマネジャー)

 パネルディスカッション「乳がんを越えて新しいあなたと出会うために」

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