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ピンクリボンシンポジウム
―最新の乳がん医療トピックス―

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乳がん専門医のお話を
動画でお伝えします。

動画配信スタート: 2024年10月1日(火)

動画① 講演「乳がんの診断と治療2024 ー最近の話題よりー」

【略歴】
1982年 千葉大学医学部卒
聖路加国際病院外科にて研修
1997年 M.D.アンダーソン癌センターほかにて研修
2003年 聖路加国際病院外科医長
2005年 同ブレストセンター長
2010年 昭和大学医学部乳腺外科教授、同病院ブレストセンター長
2021年 同がんゲノム医療センター長兼務
2022年4月より現職
日本外科学会名誉会員、日本乳癌学会名誉理事長、日本乳房オンコプラスティックサージャリ―学会顧問、一般社団法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)理事長、日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)名誉理事長

【主な著書】
“Practical Guide to Hereditary Breast and Ovarian Cancer: Annual Meeting of the Japanese Organization of Hereditary Breast and Ovarian Cancer 2021” 共同監修
“Hereditary Breast and Ovarian Cancer”(共同編集)(2021年)
『遺伝性乳がん・卵巣がんの基礎と臨床』篠原出版新社(2012年)
『「乳がん」と言われたら・・・』保健同人社(2012年)
『乳がん 正しい治療がわかる本』法研(2008年)
『専門医が答えるQ&A 乳がん』主婦の友社(2006年)
『乳癌MRI診断アトラス』(編集・執筆)医学書院(2004年)
『悪性と間違えやすい乳腺の良性病変(共著・共執)篠原出版新社(2004年) 他

≪講演のポイント≫
1. リスクに応じた新たな乳がん検診
2. 乳がん手術はどこまで減らせるか?
3. 乳がんにおけるゲノム医療

   近年、がんを取り巻く医療、とくに薬物療法の進歩には目覚ましいものがあります。特に、癌の増殖に係る遺伝子を調べ、それに呼応した分子標的薬を選択するというがんゲノム医療は、次世代シーケンサーと言われる遺伝子検査の進歩とともに、急速に普及しつつあります。その一方で、医療費の高騰は、これまでわが国が誇ってきた国民皆保険の屋台骨を揺るがす大きな問題として立ちはだかり、労働人口から外れる高齢者の増加も、それに拍車をかけています。

 
 乳がん検診も、個人個人の乳がんにかかり易さを推定し、その状態に相応しい検診を受けるというリスク層別化検診という考え方が、欧米を中心に普及の兆しを見せています。しかし、正確にリスクを推定するためには、複雑な解析プログラムが必要です。
   
 一方で、2024年は医療者も働き方改革の対象となり、いかに効率の良い働き方を実践していくかが、喫緊の課題となっています。そこで、注目されているのが、AIやロボットの活用です。介護支援ロボットや医療資材を搬送するロボットを上手に活用すれば、人手不足を解消できると思います。また、CHATGPTに代表される、いわゆる生成AIは、医師のみならず患者さんや一般の方の健康増進にも一役買うようになるでしょう。
   
 本講演では、現在の乳がんの診療において、ゲノム医学がどのような形で浸透しているかを概説し、それを下支えしているAIを、患者さんの立場で分かり易く紹介します。

動画② 講演「根治性と整容性の両立をめざして」

【略歴】
1987年 横浜市立大学医学部 卒業
1990年 米国カリフォルニア州立大学アーバイン校研究員
1991年 横浜市立大学医学部外科学第二講座大学院 卒業
1993年 横浜市立大学医学部第二外科 特別職診療医
1995年 同病院助手
1997年 同講座助手
1999年 兼 理化学研究所研究員
2003年 横浜市立大学附属市民総合医療センター総合外科 講師
2007年 同 乳腺甲状腺外科 部長 准教授
2014年 東京医科大学病院 乳腺科学分野 主任教授

≪講演のポイント≫
1. 手術しない治療
2. オンコプラスティックサージャリーの進歩
3. 今後の乳がん治療

   全切除術と部分切除術の成績は同じであることが証明されて部分切除術が基本になり、最近では早期癌に対してメスを使わないラジオ波焼灼療法が保険承認されて、乳がんの手術は縮小化の方向に向かっています。また手術の前に化学療法を行うと乳がんが縮小して整容性が高い手術ができるため、化学療法が必要な症例に対する術前化学療法は標準治療になりました。さらに術前化学療法による乳がんの完全消失=治癒ということ、また消失しなかった場合に新たな薬剤を追加すると成績が改善することが証明されて、以前は手術から始まっていた治療が大きくパラダイムシフトしています。

 
 ただ化学療法の効果は乳がんのサブタイプによって全く異なります。ホルモン受容体陽性の場合、術前化学療法で完全に消失する症例は10%程度ですが、ホルモン受容体陰性では60-70%の症例で消失します。そのためホルモン受容体陰性の症例に対しては手術省略の臨床試験が開始されて手術しない治療が現実味を帯びています。
   
 一方で手術自体も進歩しています。根治性と整容性を両立する手術の技術的な発展と普及および啓発を目的として、2012年に日本乳房オンコプラステイックサージャリー学会が発足しました。その結果、全切除の際の人工物や自己組織による再建は通常の治療になり、少し前までは研究段階だった脂肪移植ももうすぐ保険承認される段階まで来ています。また術式の多く占める部分切除術において整容性を高める術式も検討されています。この学会では形成外科医と乳腺外科医が乳がん治療における手術の意義を模索しながら、協力して治療と研究を行っています。
   
 私は消化器外科からキャリアをスタートした腫瘍外科医であり、今でも手術は最も重要な治療法であると考えています。しかし、乳がん診療における手術の位置づけが変わる中、私たち外科医の存在意義や乳がんの診療体制も変わっていくのかもしれません。今回の講演では根治性と整容性の両立を目指した現時点での乳がん治療についてお話ししたいと思います。

動画③ 講演「乳がんに備える~正しい知識と頼れるなかまを持っておこう~」

【略歴】
1994年 佐賀医科大学卒業
1994年 九州大学医学部附属病院第二外科および関連施設にて外科研修
1998年 九州大学生体防御医学研究所腫瘍外科
2001年 国立病院機構九州がんセンター乳腺科
2008年 ブレストサージャリークリニック、ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック、田園調布ファミリークリニック
2010年 東邦大学医療センター大森病院乳腺内分泌外科客員講師
2015年 がん研究会有明病院乳腺センター乳腺外科


【主な著書】
Knack&Pitfalls乳腺外科の要点と盲点(文光堂)2023年
乳腺腫瘍学第4版(金原出版)2022年
乳癌診療state of the art科学に基づく最新診療(医歯薬出版)2022年
がんとたたかう最高のヨガ大全(文響社)2021年
副作用症状別プロのコツ乳がん薬物療法副作用マネジメント(メジカルビュー社)2021年
乳願患者の妊娠・出産と生殖医療に関する診療ガイドライン(金原出版)2021年
高齢者がん医療Q&A 各論(金原出版)2020年
新版がん・生殖医療ー妊孕性温存の診療(医歯薬出版)2020年

≪講演のポイント≫
1. 乳がん治療は進歩している
2. 正しい情報を集めよう
3. 生活習慣を見直そう

背景

日本ではがん患者数が増加しており、女性に最も多い乳がんは9人に1人が生涯で罹患します。乳がんは早期発見で治る可能性が高く、マンモグラフィ検診で多くの早期がんが見つかっています。2020年のコロナ禍では検診受診率が約25%低下しましたが、2021年以降は回復傾向にあり、2021年の推計乳がん罹患数は94,400人でした。


進歩する乳がん治療

コロナ禍以降、社会ではテレワークやオンライン授業などが普及し、医療施設でもスクリーニング検査と面会制限、WiFi環境整備が一般的になりました。治療面では、新しい遺伝子検査により、乳がん・卵巣がんの発症リスクや乳がん治療後の再発予測が可能になりました。遺伝学的に乳がん・卵巣がんのリスクが高い方には高精度の検診や予防的手術が保険診療となり、乳がん再発リスクに応じた薬物療法が選択できるようになりました。乳房再建やリンパ浮腫への新しい手術手技も普及してきています。


日ごろの生活習慣を見直そう

喫煙、運動不足や体重増加が乳がん発症リスクとその後の再発リスクを高め、患側上腕のリンパ浮腫を悪化させることがわかっています。治療効果を高めるためにも、手術後の食事と運動習慣の見直しは重要です。


正しい情報を集めよう

若い患者さんには乳がん再発予防の薬剤によって、その後の妊娠が難しくなる場合があります。それに備えた卵子や卵巣組織の凍結保管とその後の妊娠に対して、国の支援事業が始まっています。また、医療用ウィッグや乳房切除術後の下着購入費にも多くの自治体から助成金がでています。医療技術だけでなく支援体制も整備されてきており、患者さんはその後の人生を見据えた治療選択も可能になってきています。乳がんにはコロナウイルスのような予防ワクチンはありませんが、早期発見と治療により治る可能性が高い疾患です。ぜひ正しい最新情報を得て、賢く備えましょう。

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