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ここ20年ほど乳がん検診の標準となっているマンモグラフィ(乳房X線検査)だが、若年者に多い高濃度乳房の場合、小さなしこりが見逃される恐れがある。米国の食品医薬品局(FDA)は、マンモグラフィ検診で高濃度乳房であることが分かった時は本人に知らせる措置を2024年9月10日までに全米で義務化することを打ち出した。 欧米では乳房濃度に応じてエコー(超音波)や乳房MRIも用いることが標準的になっている。近い将来、日本でも乳房濃度に応じた検診手段の違いを明確にする必要があろう。 仰臥位三次元超音波検査(ABUS)では、三次元画像から人工知能(AI)技術で小さなしこりの候補を選び、そこに医師が所見を加えることで精度向上が期待できるとの論文が2023年初めに出た。AIを上手に組み込むことで、1人の読影者でダブルチェックと同じ標準的な読影ができるようになることが期待される。
医療における3つの基本概念である、予防、診断、治療とデジタルテクノロジーとのかかわりを見ると、予防ではスマートフォンやスマートリングで各人の脈拍や呼吸数、運動量などを読み取り、蓄積したデータから疾病リスクの予測、健康維持の方法を探るといったことが可能になる。診断分野では内視鏡画像からAIが病変の候補を見つけ、より短時間で病気を発見することをサポートするシステムの開発が進んでいる。
乳がん治療では疑わしいしこりの一部を採取して顕微鏡で観察して本当にがんなのかを判断する病理診断が重要だが、これをAIで自動化できないかという研究や、乳がんのタイプや適切な薬をAIで判断するシステムの開発も進んでいる。デジタル医療技術の開発にあたっては医療従事者に代わるものを目指すのではなく、医療従事者をサポートして患者様、医療従事者ともに幸せになるものを目指すことが大切だ。
がん治療では、がん種ごとに最良の治療法「標準治療」がある。標準というと「並みのもの」をイメージしがちだが、そうではない。標準治療は科学的根拠(エビデンス)に基づき多くの患者さんに行うことが推奨される、効果が高く安全性が確認された治療法で、確立までに大変長い時間がかかっている。一方、最新治療は一見期待できそうだが研究段階のものが多く、本当に最良の治療なのかは検証が必要。長期間の臨床試験で安全性と有効性が科学的に証明されて初めて、最良の治療である標準治療になる。
標準治療の教科書のようなものとして「診療ガイドライン」がある。エビデンスに基づき患者さんにとって最良と考えられる検査や治療法を提示しており、患者と医療者が治療方針を決める際の判断材料の一つとして利用される。
ゲストトークは「乳がんが教えてくれたこと」と題し、株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長の小巻亜矢さんが、フリーアナウンサーの河野美和さんのインタビューに答える形で進められた。ともに乳がん経験者。
小巻さんは2007年、友人の付き添いで子宮頸がん検診を受けた際、乳がん検診も受けて見つかった。 当時、体がだるい感覚はあったが、明確な自覚症状はなかった。「検診は大事であり、助けてもらった。それまで受けていなかったのは何と恐ろしいことか」と振り返った。
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