保坂サイコオンコロジー・クリニック院長 保坂隆先生にお話をうかがいました。
Q. 乳がんの治療中にコロナ禍となり、以前にも増して孤独を感じることが多くなりました。行動が制限され、治療も長期化する中、「他者とより良い関係性を築く」「周囲の理解を得る」には、どうしたらよいでしょうか。
A. まず、「他者とより良い関係性を築く」についてですが、治療を続けるにあたって欠かせないのが、家族のサポートです。患者さんはそれを当たり前のように受けるのではなく、「罹患によって家族も戸惑ったり、不安を感じている」場合があると頭の片隅においておくことが、家族とよりよい関係を保つ鍵となります。
がんと診断された時、その患者さんの家族は「いつか大切なこの人を失うかもしれない」と喪失感を抱く「予期悲嘆」という状態に陥ります。そしてそれは治療が長期化しても、ずっと続いていきます。そうした気持ちを抱きながら気丈にサポートしてくれていることをぜひ知っておいてください。
治療中、多くの患者さんの大きな心の支えとなるのは、患者会などへの参加です。患者会とは、同じ病気を持つ患者同士が集い、闘病の辛さや不安などを語り合ったり、情報交換をする場のこと。対面が難しいコロナ禍となってからは、オンラインで開催する会が増えました。
対面して会話した際に得られる情報量が100%だとすると、メールは7%、電話は30%だと言われています。一方、相手の表情が分かるオンラインの情報量は、70%に達するのではないかと個人的には感じています。孤独感を解消するためにも、オンライン患者会への積極的な参加をおすすめします。
2つ目の「周囲の理解を得る」については、本題に入る前に「乳がんであることをどこまで公表するべきなのか」をお話ししておきたいと思います。基本的に私は、家族のほか、職場の上司と近しい同僚にはお話しておいた方がいいかもしれません。もし友人や近所の人に伝えたとしても「どんな言葉をかければいいかわからない」「何もしてあげられない」という理由でご本人から距離を置いてしまうケースもあるようです。
ではなぜ、職場の上司や近しい同僚には公表するべきなのか。理由は、職場に復帰する際に仕事の配慮をお願いせざるを得ないからです。
乳がん治療の一種であるホルモン療法は、外見だけでは治療中だと分からず、患者さん本人から「副作用に苦しんでいるのに、上司や同僚に理解してもらえない」といった声が寄せられていると聞きましたが、職場への伝え方を工夫したり、必要に応じて診断書を提出するなどしてみるとよいでしょう。
≪お答えいただいた専門家≫
保坂 隆先生
保坂サイコオンコロジー・クリニック 院長