聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長 山内 英子先生にお話をうかがいました。
Q. 国や自治体などから「40歳になったら定期的に乳がん検診を受ける」ことが推奨されていますが、「もしも乳がんだと診断されたら」と想像してしまい、怖くて受ける気になりません。
A. 乳がんと診断された方へのサポートは多岐にわたります。早期発見のためにも、2年に1度の乳がん検診を心がけてください。
乳がんの罹患年齢のピークは40~50代の働き盛り世代。仕事のみならず家庭でも大きな役割を担っている方は多いと思います。中には「乳がんと診断されたら、周囲に迷惑をかけてしまう」という責任感から、検診を躊躇している方もいらっしゃることでしょう。一方で乳がんは、‟早期発見が叶えば“90%以上の確率で治療を終えた後、普段の生活に戻れる病気です。特に家族歴のある方、胸に何らかの異変が感じられた方は、すぐに検診を受け、早期発見につなげてください。
検診ののち乳がんと診断された場合、医療機関では、治療のみならず、治療後の生活に関するさまざまなサポートを行っています。
例えば、仕事を続けていくための支援。患者さんから「治療を受けながら仕事をしたい」、「治療後に復職したい」という希望があった場合は、治療と仕事をどう両立させていくかについて共に考えていきます。
患者さんとその子どものケアを行なっている医療機関もあります。母親の病気は子どもにとって非常に大きなストレスとなります。まずは「子どもにがんのことをどう伝えるか」を考えながら、患者さんとその子どもが安心して生活を送れるようサポートします。
妊娠を希望されている方は、乳がんと診断された後、すぐに主治医に相談してください。乳がん治療で薬物療法を行った場合、卵巣機能に影響を及ぼすため、妊娠するために必要な力である「妊よう性」が低下してしまう可能性があるからです。まずは、乳がん治療前にカウンセリングを受け、ご希望に応じて卵子凍結や受精卵の凍結などの妊よう性温存治療について検討してみると良いでしょう。
近年、乳がんの治療期間は場合に寄っては5~10年と長期化していますが、医療現場のサポート体制は充実しています。早期発見のためにも、定期的に検診を受け、自分の乳房を意識する「ブレスト・アウェアネス」を心がけてください。
≪お答えいただいた専門家≫
山内 英子先生
聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長