聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長 山内 英子先生にお話をうかがいました。
Q. 乳がんは40歳以上の人がかかりやすい病気だと聞きました。20代・30代から検診は受けたほうがいいですか?
A. 基本的にはおすすめしませんが、「家族歴」のある方については、40歳を待たずに検診を受けてください。
乳がん検診に用いられるマンモグラフィは、早期発見に役立つ一方で、被ばくや過度なストレス、時間的な拘束などのデメリットを伴います。そのため、罹患率の低い20代・30代の方には検診をすすめていません。まずは自分の乳房を意識する「ブレスト・アウェアネス」から始め、胸の変化に気づくようにしてください。セルフチェックは月に1度、胸が張っていない月経直後に行なうとよいでしょう。
近い血縁内に「45歳以下で乳がんを発症している」方がいらっしゃる場合は、20代・30代でも検診へ行くことをおすすめしています。乳がん患者さんのうち、10~15%に家族歴があるといわれており、遺伝性のリスクには注意が必要です。
また、20代・30代の方によく見られるのが、乳腺組織が多い高濃度乳房です。マンモグラフィでは、乳腺組織が多いほど白っぽい塊のように映ってしまうため、しこりなどの病変が発見しづらい場合があります。そのため、超音波(エコー)検査との併用が良いとされていますが、高濃度乳房は病気ではないため、追加で検査を受ける際には自費となります。
こうした検査に加え、遺伝性乳がんの発症リスクを知る手立てとして遺伝子検査が挙げられます。
最近の欧米の研究で、BRCA1とBRCA2という2つの遺伝子の病的変異による‟遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)“の存在が明らかになりました。遺伝子検査では、ご自身がHBOCかどうかを確かめることができますが、遺伝子について詳しく知ることはご本人だけでなく、家族にも関わる非常にセンシティブな問題です。
HBOCが疑われる方は、まず医療機関で実施されている遺伝カウンセリングを受け、遺伝性乳がんや遺伝子検査に関する疑問や不安を解消することから始めてみてください。
≪お答えいただいた専門家≫
山内 英子先生
聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長