Q. マンモグラフィ以外の最新の乳がん検診方法は、ないのですか?
また近く実用化されないのですか?
A. 乳がん検診の方法としては、今のところ、40歳以上にマンモグラフィを2年に1回、という方法が日本で推奨されている唯一の方法です。それ以外に、乳がん検診として科学的に検証された方法はありません。
若い人たちが受けることの多い乳腺エコー検査(超音波検査)に、がん検診としての効果があるかどうか、実際は不明です。現在、マンモグラフィと乳腺エコー検査を併用する方法の研究が進められている段階です。それも、「併用」について、です。乳腺エコー検査だけによる効果は分かっていませんし、また、30代を対象に検査して有効なのかどうかも科学的には検証されていません。(アメリカでは、乳腺エコー検査を併用する方法に関する研究で、費用対効果も含めて検証した結果、乳腺エコー検査の併用は勧めない、という研究も報告されています。)
諸外国でも、検査方法はマンモグラフィがゴールデンスタンダードです。
最近、血液検査とか、尿検査で、10種類以上のがんを見つけるなどといった検査もネットやマスコミで紹介されています。
その中に乳がんも含まれているものもありますが、これらの方法に検診としての効果があるかどうか、検証されていません。そもそも、健康な人を対象にした検査は、厚生労働省に認可されていなくても販売できますので、血液検査や尿検査で10種類以上のがんが分かる、といった検査の中には、認可を得ていないものもあると思われます。
また10種類以上のがんが分かる、といっても、どのがんなのかわからない場合もあります。例えば、10種類以上の中に胃がんや乳がん、肺がん、膵がん等が含まれていたとして、「陽性」となった場合、乳がんなのか、肺がんなのか、膵がんなのか、それぞれのリスク(確率)が分からない場合は、それぞれのがんに対し、さらに詳しい検査を行う必要が生じます。
もし、こういう検査を受けられる場合は、こうした検査の特質を理解したうえで受けられるようにしてください。
日本対がん協会では現在、血液中のバイオマーカー等の臨床研究を国立がん研究センターや大学などとともに進めていますが、あるマーカーは膵がんを対象に、また別のマーカーは乳がんを、といったように、「特定のがん」に絞っています。 多くの「健康な方々」を対象に、日常的に実施する検診に使うには、 こうした研究を積み重ねてデータを分析し、検診に使っても大丈夫だと判断される必要があると考えています。
≪お答えいただいた専門家≫
小西 宏
公益財団法人日本対がん協会 がん検診研究グループ マネジャー
関西大学法学部卒。産経新聞社を経て朝日新聞社入社。
広島、福井、大阪本社社会部、東京本社科学部等で原発、基礎医学、生殖医療等の取材を担当。
東京本社科学医療部や企画報道部でデスクをし、2008年より公益財団法人日本対がん協会広報マネジャー。
2016年よりがん検診グループマネジャー。
(東京大学大学院医学系研究科生物統計学分野客員研究員)