聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長 山内 英子先生にお話をうかがいました。
Q. 40歳になってから、乳がん検診を2年に1度必ず受けています。50代以降、乳がん予防のために特に注意すべきことはありますか?
A. 日本では、乳がんの罹患年齢のピークが年々高くなっています。50代のみならず、60代になっても定期的な乳がん検診を続けていくことをおすすめします。
乳がんの発症には、遺伝要因と環境要因があります。前者は「家族歴がある」など先天性の要因、後者は早い初潮や遅い閉経、出産回数など後天的な要因を指します。
【乳がんの発症リスクを高めるとされる環境要因】
□ 初潮が早く(11歳以下)、閉経が遅い(55歳以上)
□ 初産が30歳以上、または出産経験、授乳経験がない
□ 閉経後の肥満
この環境要因に大きく関係しているといわれているのが食生活の欧米化です。欧米人と同様に、日本人が初潮を迎える年齢は徐々に早くなり、逆に閉経は遅くなりました。月経が長期化すると、乳がんの発症に影響を与える女性ホルモン・エストロゲンに晒される期間も長くなります。その結果、乳がんの発症リスクの高い人が増えているのです。
実際に、国立がん研究センターの統計データでは、日本人の乳がん罹患率が年々増加していることが示されています。2003年には30人に1人とされていた罹患率が、2019年には9人に1人と約3倍に増え、年間9万人以上が乳がんにかかるといわれています。
加えて、日本人の乳がん罹患年齢のピークが40~60代なのに対し、欧米は60~70代が最多。年々日本人の罹患年齢が高くなっているのも、食生活の欧米化が関係していると考えられます。
60代に入ったからといって「乳がんは40~50代の病気だから、私には関係ない」と見過ごすのではなく、自分の乳房を意識する「ブレスト・アウェアネス」をぜひ続けてみてください。2年に1度の検診を欠かさず受けるほか、定期的なセルフチェックを行ない、しこりがあるなど胸の異変に気づいたら、すぐに診察を受けていただければと思います。
≪お答えいただいた専門家≫
山内 英子先生
聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長