Screening
予防と検診

どんな人がかかりやすい?
誰にでもリスクはありますが、下記に当てはまる方は特に注意が必要です。
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家族(祖父母、父母、兄弟姉妹)で乳がんや卵巣がんにかかった⼈がいる
家系内に乳がん患者さんがいる女性は、血縁関係が近いほど、また、乳がん患者さんが家系内に多くいればいるほど、「遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)」であるリスクが高くなります。乳がんの多くは遺伝しないものですが、乳がんの10%程度はこのHBOCといわれています。
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初産が30 歳以上、または 出産経験がない、授乳経験がない
初潮が早く(11 歳以下)、閉経が遅い(55 歳以上)乳がんの発⽣には、⼥性ホルモンであるエストロゲンが深く関係しています。そのためエストロゲンが分泌されている期間が⻑い⼈ほどリスクが⾼まります。妊娠‧授乳期間にはエストロゲンの分泌が⽌まるためリスクが下がります。
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閉経後に体重が増えた
閉経後はエストロゲンの分泌が⽌まりますが、別のホルモンが脂肪組織でエストロゲンに変わります。したがって、閉経後の肥満もリスクとなります。
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喫煙する
喫煙により乳がん発症リスクが高くなることはほぼ確実です。また、受動喫煙も乳がん発症リスクを高くする可能性があります。禁煙および他人のたばこの煙(副流煙)をできるだけ避けることをお勧めします。
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アルコールをよく飲む
アルコール飲料の摂取により、乳がん発症リスクが高くなることはほぼ確実です。飲酒は控えめにしましょう。
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乳腺疾患(乳腺症など)にかかったことがある
乳がんになったことがある
参考:日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版」
予防はできるの?
乳がんの完全な予防方法は残念ながらありませんが、以下のことを心がけましょう。
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脂肪の多い食事を避ける、飲酒は控えめに、たばこを吸わない
肥満(特に閉経後)やアルコールの摂取は、乳がん発症リスクを確実に高めます。
喫煙もほぼ確実にリスクを高め、受動喫煙もリスクを高める可能性があります。 -
乳房を意識する生活習慣「ブレスト・アウェアネス」を!
バランスのとれた食事、適度な運動といった基本的な生活習慣に加え、「ブレスト・アウェアネス」の実践が重要です。
参考:日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版」
がん検診 Q&A
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日本の検診受診率は低い?
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欧⽶などでは検診受診率の向上と治療の進展も重なって、乳がんによる死亡率が年々減っています。
⼀⽅で、⽇本の乳がん検診受診率は先進国の中でも極めて低いレベルに位置し、年々死亡率は増加傾向にあります。
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マンモグラフィ検査と超音波検査の違いは?
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現在、乳がん死亡率の減少効果が国際的に証明されている検査方法がマンモグラフィです。乳房専用のX 線検査装置のことで、しこりの影や石灰化を写し出し、早期の乳がんも発見できる優れたものです。
超音波(エコー)検査は、乳房に超音波をあてて内部からの反射波を画面に映し出すものです。
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検診を受けるには?
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40歳以上の女性は職場でのがん検診制度(健康診断のオプションなど)があれば活用し、なければお住まいの市区町村が実施するがん検診を受診しましょう。
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デンスブレスト(高濃度乳房)って?
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乳房の状態を指す言葉で、病気ではありません。乳腺の割合が高くマンモグラフィでは乳房全体が白っぽくなり、白く写る乳がんを見つけにくい状態のことです。
超音波検査との併用が有効な場合もあるため、デンスブレストと言われたことがある方や、気になる方は乳腺専門医に相談しましょう。
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要精密検査になったら?
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がん検診の結果が「要精密検査」だったとしても、すべてががんと診断されるわけではありません。過度に心配せず、すぐに医療機関でより精度の高い検査を受けることが大切です。必ず「要精密検査」を受けましょう。
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40歳未満は検診を受けなくていいの?
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心配だからといって若いうちから自己判断でマンモグラフィ検査を受けるのはお勧めしません。乳腺専門医と最適な検査の受け方を相談しましょう。
特に、家族に乳がんや卵巣がんの罹患経験者がいるなど、遺伝性乳がんの心配がある方は、検診推奨年齢の40歳を待たずに、早めに乳腺専門医に相談することをお勧めします。
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検診のメリット・デメリットは?
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マンモグラフィ検査には、乳がんによる死亡を減らすことの他、早期発見できれば体への負担や費用が少なく済む治療法を選ぶことができたり、医療費が少なくて済む可能性があったりします。
一方で、極めて微量の放射線被ばくがあることや、がんではないのにがんかもしれないと診断してしまう「偽陽性」、逆に本当はがんなのにがんはないと診断してしまう「偽陰性」、寿命に影響しないがんを見つけてしまう「過剰診断」が起きる可能性があります。
総合的にみるとメリットがデメリットを大きく上回るため、40歳以上の女性は2年に1度の検診を受けることが大切です。