【講演①】遺伝は未来へのヒント

遺伝は未来へのヒント ― 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を知ろう

【講演①】遺伝は未来へのヒント ― 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を知ろう

3つのポイント
  • 「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」について知ろう

  • どんな検査や予防医療を受けられるの?

  • 遺伝を知ることは、希望への準備

乳がんの多くは偶然に発症しますが、その約5%は生まれつき受け継いだ遺伝子の特徴によって発症しやすくなる「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」と考えられています。HBOCの主な原因はBRCA1およびBRCA2という遺伝子の病的変異であり、一般女性の生涯乳がん罹患リスクが約11%であるのに対し、BRCA1またはBRCA2の病的変異を持つ方では50~80%程度まで高くなることが知られています。

HBOCは決して珍しい病気ではありません。若年で乳がんを発症した方や、家族内に乳がん・卵巣がんの患者さんが複数いる場合には、その可能性を考えることが重要です。2013年には米国の俳優アンジェリーナ・ジョリーさんが自身のBRCA1病的変異を公表し、予防的乳房切除術を受けたことが世界的な話題となりました。

近年、HBOC医療は大きく進歩しています。遺伝学的検査、リスク低減手術、PARP阻害薬による治療に加え、日本では2026年6月から、BRCA1またはBRCA2の病的変異を持つ患者さんの第一度近親者(親・兄弟姉妹・子)に対しても、保険診療で遺伝学的検査を受けることができるようになりました。そして病的変異が確認された場合には、サーベイランス(MRIなどを用いた、より詳しい検診)やリスク低減手術(乳房、卵管・卵巣)が受けられるようになりました。これは「がんになってから治療する医療」から、「がんになる前に見つける・防ぐ医療」への大きな転換点といえます。

しかし、遺伝子の病的変異があることは「将来必ずがんになる」ことを意味するわけではありません。遺伝は運命ではなく、未来を考えるためのヒントです。本講演ではHBOCの基礎知識と最新の医療についてわかりやすく解説するとともに、遺伝医療が目指す「自分らしい人生を支える医療」について考えたいと思います。未来を知ることは、運命を決めることではありません。未来を知ることは、自分らしい人生を歩むための第一歩なのです。

  • 大野 真司 先生

    大野 真司 先生

    社会医療法人博愛会 相良病院 院長
    さがら病院宮崎 統括院長
    足立乳腺クリニック 統括院長
    札幌ことに乳腺クリニック 統括院長
    一般社団法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構理事長