シンポジウム 2025

ピンクリボン シンポジウム2025

~最新の乳がん医療トピックス~

10月1日より専門医による講演をオンラインで公開します。

今年は、「アジアと欧米の違い」をテーマに最新の乳がん情報を石川孝先生から、「AYA世代※の乳がん」について渡邊知映先生からお話しいただきます。

※15~39歳の思春期・若年成人

日程
10月1日(水)10:00~ オンライン配信予定
  • 石川 孝 先生

    東京医科大学 乳腺科学分野 主任教授
    横浜市立大学消化器・腫瘍外科 客員教授

  • 渡邊知映 先生

    昭和医科大学保健医療学部看護学科 教授
    昭和医科大学乳腺外科兼担

石川 孝 先生

アジアと欧米の違い Bridging across the Pacific

  • 欧米の癌治療ガイドラインを外挿する問題について

  • 第33回日本乳癌学会学術総会で行った研究の概要

  • 研究からわかったこと

消化器外科医としてキャリアを開始し、現在は乳腺外科医として乳癌診療に携わっていますが、海外のガイドラインをそのまま日本の癌診療に外挿することに対する問題を感じています。

Body mass indexが30を超えると明らかな肥満と定義されますが、30以上の人口比率はアメリカでは35%に対して日本では5%以下です。肥満は多くの疾患の原因となり、また他の疾患の治療に大きく影響しますが、癌治療においても同様です。例えば日本における胃癌の手術は胃切除と適切なリンパ節郭清が基本ですが、欧米の診療ガイドラインでは、リンパ節郭清の代わりに術後放射線治療を推奨しています。これは肥満の症例では十分なリンパ節郭清が困難であるためです。同様の状況は乳癌の治療においても考えられます。1-3個のリンパ節転移を伴う乳癌症例で乳房全切除後に5年間で16.5%の局所再発が生じ、術後胸壁照射がそれを有意に低下させ、生存率も改善させるという欧米のエビデンスがあり、それを基に作成されたガイドラインではリンパ節転移が一つでもある場合に胸壁照射を推奨しています。しかし、16.5%の局所再発率は私達の臨床経験からは大きく乖離しているため、日本のNational Clinical Databaseを使って調査しました。その結果、当該症例の日本での局所再発率は5%でした。この違いに関してはいくつかの理由が考えられますが、欧米のエビデンスを基にしたガイドラインをそのまま日本の癌治療に当てはめることはできないことを示しています。

今年の日本乳癌学会学術総会では、乳癌診療におけるアジアと欧米の違いに注目して、外科治療、内科治療、画像診断、乳房再建、緩和医療、医療情報について台湾、韓国、アメリカなどの施設および日本の多くの施設が協力して大規模コホート調査やアンケート調査を行いました。今回はその中で判明したいくつかの違いについてお話ししようと思います。

渡邊 知映 先生

AYA世代の乳がん

  • AYA世代の乳がんの特徴

  • 乳がん治療にともなう外見の変化へのケア

  • 乳がん治療と妊娠・出産について

AYA世代という言葉を聞いたことがありますか?
AYAとは「Adolescent & Young Adult(思春期・若年成人)」の略で、一般的には15~39歳のがん患者さんを指します。日本では毎年、約4,000人がこの世代で乳がんと診断されています。

この世代の患者さんは、治療中の仕事の継続や将来の妊娠・出産、育児と治療の両立、治療による外見の変化など、さまざまな課題と向き合わなければならないことが特徴です。また、治療後の健康維持も重要な課題のひとつです。

一方で、若年の乳がん患者さんの中には、自らの体験を発信したり、当事者同士のサポートを活用したりして、治療にともなう困難を工夫しながらしなやかに乗り越えている姿も多く見られます。

本講演では、AYA世代における乳がんの特徴を解説するとともに、若年の乳がん患者さんが抱えるさまざまな課題、特に治療後の妊娠・出産や外見の変化へのケアについて、皆さんと一緒に考える時間としたいと思います。