Our Efforts
取り組みの背景

ピンクリボンフェスティバルの活動が始まって以降、医学の進歩による治療の個別化・長期化、仕事や生活の両立など、乳がん罹患者とそのまわりの人々を取り巻く環境は大きく変化しました。 さらに、早期発見のために必要な乳がん検診に関しても、年齢や乳房の状態、遺伝のリスクなどによって適切な検診に違いがあることが明らかになっています。
そこで、乳がんに関する課題を把握するため、生活者、罹患者調査を実施しました。さらに乳がん患者会、乳がん専門医により組織する検討委員会にて意見交換会を経て、コンセプトとミッション、5つのカテゴリーを設定しました。
2021年実施 乳がんの課題検討委員会
- メンバー
- 昭和大学医学部乳腺外科教授、日本乳癌学会監事 中村 清吾
聖路加国際病院 副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長 山内 英子
いながき乳腺クリニック 院長 稲垣 麻美
若年性乳がんサポートコミュニティ Pink Ring 代表 御舩 美絵
※2021年時点
2020年度実施生活者・罹患者調査
※2020年当時は、「セルフチェック」と表現することが主流でしたが、2021年以降は「ブレスト・アウェアネス」の訴求にそって、自分の乳房の状態を見たり触ったりすることを「ブレストチェック(乳房チェック)」と表現しています。
セルフチェック・検診はまだまだ実施している人が少ない現状
事務局では乳がんに対する意識を把握するため、簡易調査を実施しました。ここでは、オンラインで行ったアンケート結果の概要をご報告します。
オンラインでの意識調査のまとめ(20~60歳代女性、各年代100人以上、計604人回答)
あなたは乳がんのセルフチェックを行っていますか。

セルフチェックを継続的に行っている人はわずか9%
あなたは乳がん検診に行ったことはありますか。

42%が乳がん検診にいったことがない(マンモグラフィ適正年齢の40歳以上は69%がいったことがある)
あなたはマンモグラフィの適正年齢に関して以下でどれが正しいと思いますか。

74%が【マンモグラフィの適正年齢=40歳以上】を知らない(特に、低く認識している人が50%と多い)
あなたは日本人女性に増え続ける乳がんにおける課題は何だと思いますか。(複数回答)

乳がんにおける課題として、「検診受診」と「セルフチェック」が大半を占めた。
あなたのまわりで乳がん経験者はいますか。

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周りに乳がんの罹患経験者がいると答えた人は32%。3人に1人は身近に乳がんの人がいることを認識している。
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乳がん経験者と接する際の課題として、「接し方・慰め方がわからない」「距離感」「力になれない」といった戸惑い、無力感で悩む声が圧倒的多数。
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もし乳がんと告知されたらという想定での心配事は、全年齢で「完治するか(余命)」が最多、ついで「費用」が多い。回答者の年齢による差は、20歳代は「乳房切除」「漠然とした不安」、30~50歳代は「家族」が多い。その他全体的に、「治療と副作用の不安」「仕事」「治療期間」などの声も。
意識調査では、国が定めるマンモグラフィ検診の対象年齢40歳以上の約7割が検診に行ったことがあるものの、ほとんどの人がセルフチェックは定期的に行えていない状況が分かりました。マンモグラフィの適正年齢も正しく認識されていないなど、基本的なブレストケアの情報を正しく伝えることの必要性を新たに認識いたしました。
どこに情報がある?自分ゴト化できない…多岐に渡る課題意識
乳がんの課題については、日本対がん協会がんサバイバー・クラブの「サバイバーネット」で乳がんサバイバーの方、乳がんケアギバーの方を対象にアンケートをしました。その概要をご紹介します。
「サバイバーネット」調査のまとめ(乳がんサバイバー、ケアギバー※:58人回答)
周囲への公表

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83%が自身の乳がんを周囲の人間に伝えている。(友人だけ、など限定的な場合も含む 理由としては「自分らしくいるため」「周囲の理解、協力が必要不可欠のため」「同じ病気の人の役に立ちたい」のほか、「必要に迫られて」という意見も。
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残る17%は、「伝えたくない」と「伝えたいが伝えることができていない」で、その理由としては「相手が戸惑ってしまうから」「偏見を持たれたくない、傷つきたくない」「心配させたくない」。
乳がん関連での困りごと、難しさ(複数回答)

乳がん関連での困りごと、難しいと感じることについては、様々な意見があり、「心の問題」「副作用・症状・後遺症の心配」が最も多く、次いで「正しい情報収集の難しさ」「外見の変化」が続く。その他、就労、経済面、コミュニケーションや人間関係といった難しさを感じている。
乳がん啓発の課題(複数回答)

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乳がん啓発の課題としては、6割以上の人が「自分ゴト化できていない」「検診受診率が低い」を挙げ、次いで「正しい情報の入手が難しい」や「予備知識が少ない」など。
アンケートからは、個人の考えや環境によって公表の度合いは変わるが、多くのサバイバーさんが乳がんになって自分らしく過ごすように周囲への理解を求めていることが分かりました。また、乳がんに関する悩みは実に多様化しており、治療や副作用の直接的なことだけでなく、生活面の様々な局面で難しさを感じていることが多いことが分かります。ピンクリボンフェスティバルでは、毎年最新の治療情報や心のケアについての講演など、サバイバーの皆さんのお役に立つ情報を発信しておりますが、さらに加えて、より多くの人に乳がんへの理解を促すために、乳がんになっても自分らしく過ごすことができるということを広く啓発していきたいという想いを強くしました。
※サバイバー:がん告知を受けたことのある方 / ケアギバー:がん患者さんを支えるすべての方
乳がんと診断されたら、仕事は?お金は?家族は?など多くの不安が
罹患経験者への調査では、実際に困っていることに関して「心の問題」「治療や副作用」「情報収集」「復職や就職」「外見の変化」「周囲の理解」「経済的な負担」など、不安や辛さはひとそれぞれ違うことが分かりました。その多様な悩みを理解し、治療や適した相談先、乳がんに関わる様々なケアの内容などがんとともに生きるための 助けとなる正確な情報を伝えることの重要性が明らかになりました。